Dr. Jの仕事と子育ての記録

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【家庭の医学】入院時、傷病手当金と有給休暇のどちらを使うべきか②/2

この記事では、傷病手当金の申請にあたっての現場での実際的なところを書いていきます。

 

前の記事で傷病手当金と有給のどちらを使うべきかということについて書きました。

dr-jun.hatenablog.com

その中で出てきた、傷病手当金の申請に必要な「療養のために労務が困難な状況」とは具体的にはどういう状況であるのか。また、実際に患者さんはどのようにしているかについての体験談を述べていきたいと思います。

 

就労困難な状況は、誰がどのように決めるのか?

まず、誰が就労困難な状況かを判断するかというと、その病気を治療している主治医です。傷病手当金の申請をする時に申請書が必要になってきますが、この申請書は病院に提出して、医師に書いてもらう形になります。

では、どのような状況が就労困難な状況なのかというと、実は明確に決まってはいません。決まっていないからこそ、その判断も主治医次第ということになってしまいます。例えば、入院治療は、これは間違いなく就労困難です。

では、外来通院の場合はどうでしょう?抗癌剤の治療を外来通院で受けている場合は?手術を受けて退院した後、まだ少し痛みが残るような状況は?病気の症状がまだ残っていて、日常生活は送れるけれども仕事を満足に行う自信がない時は?答えは「すべて主治医の判断」です。というよりは、主治医判断に任せるしかないと思います。同じ治療をしていても、その影響は人によってさまざまです。もともと体力がある人ない人、痛みに強い人弱い人、いろいろな方がいますから、「この治療を受けているから就労困難」とはなりません。

 

ただ、一般的には患者さんから「まだ仕事をする自信がないから、自宅療養にしてくれないか?」と頼まれたら、多くの医師はOKを出すと思います。ただ、あまりに見た目が元気そうであったり、治療が終わっているのに漫然と継続していると、主治医から「何で?」と思われてしまうかもしれません。特に、病気が安定している中にも関わらず、傷病手当金の申請が長くなってきた時は、主治医に傷病手当金の継続をいつまでしてよいかの確認はしておいた方が無難だと思います。ある月から突然、申請が取り下げられることもあり得ます。

療養期間の決め方も曖昧

療養期間も具体的にどんな治療をしていると療養なのかは、明確に決まっていません。つまり、これも主治医の判断次第です。

いつまで療養期間にしてもらえるのか聞きづらい場合には、例えば主治医に「いつから仕事を再開してもよいか?」と聞いてみるといいかもしれません。その期間がその主治医がおおよそ考えている就労困難な療養期間です。もし「すぐに働いてもいいですよ。」と言われたけれども、自分としては不安もあるのでもう少し仕事を休んでいたいと思った時には、正直にその旨を主治医に伝えるのが良いと思います。

ただ、医師もいろいろな方がいますから、頼みやすい医師もいれば頼みにくい医師もいるのは確かだと思います。また、傷病手当金について、制度は知っているけれども、内容を詳しく知らない医師の方が実は多いです。どういう医師に巡り合うかは「運」次第にはなってしまいますが・・・。

 

実際に長期的に治療を受けている患者さんはどうしているか?

ここからは自分の体験談について書いていきます。

傷病手当金を受ける方の約2割は、癌の治療を受けるために仕事を休んでいます。私は大腸癌の診療に携わることが多いため、その治療に関連した傷病手当金の申請をお願いされることが多いです。

手術のための入院+退院後の自宅療養期間に仕事を休む方

私の印象では一般的な傷病手当金を申請されるケースです。ただ、実際はそんなに多くはない印象です。なぜかは聞いたことはありませんが、有給を使っているのでしょうか。確かに、退院してすぐに働けば、休みは1週間ちょっとで済みますから、有給の方が支給額が良いのかもしれません。

外来通院の抗癌剤治療のために仕事を休む方

自分の印象としては、上の方よりももっと少ないです。これは、治すことが難しい大腸癌に対して抗癌剤治療を受けていた患者さんがおっしゃっていた話ですが、「長期間仕事を休んだら、仕事のブランクと体力の低下で仕事に復帰できる自信がない」ため、仕事を続けている方もいました。これは余談ですが、傷病手当金の申請書を会社に請求したが、渋られてなかなか申請書をくれない、というブラックな企業勤めの方もいました。

 

最長で1年6ヶ月の傷病手当金がもらえるわけですが、やはり仕事を長期間休むこと自体は職場復帰のハードルを上げてしまうことになり、長期間治療を要する場合でも、できる範囲で仕事を続ける人の方が多い印象です。

結局は、自分の判断と主治医との相談になってしまうのですが、考える上での情報は必要だと思います。そのきっかけになってくれると嬉しいです。

 

では。