Dr. Jの仕事と子育ての記録

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【家庭の医学】知っておいて損はなし!?縫った方が良い傷の基準

仕事柄ではありますが、時々友人から「子供が怪我したんだけど、病院行った方がいい?」と、連絡を受けることがあります。確かに、どんな傷は病院に行った方がいいか判断できませんもんね。

 

では、どんな傷なら病院で処置を受けた方がよいのでしょうか?

この記事では

  • 受傷したときの初期対応
  • どんな傷であれば病院につれていけばよいか

以上を説明していきます。

 

なお、今回は日常的な傷を前提にしていますので (作業をやっていて切った、

転んで傷ができた等の傷)、刃物で刺された、高所からの転落などは全く別の対応に

なります。また、犬や猫に噛まれてできた傷は、少し考え方が違うので、最後に

書きました。

 

怪我で傷を負った時の対処法!こんな時は病院に相談。

 

1. 出血を止めるために、傷を圧迫する。

まずは、出血を止めることです。出血が止まるだけでも少し気持ちに

落ち着きが出てきますし、後述するように傷を観察する必要があるのですが、

これがしやすくなります。血が傷にたまっていると、その奥がわからないですからね。

 

止血をするための方法ですが、傷に清潔なガーゼを当てて、その上から圧迫します。

当てるガーゼは1~2cmくらいの厚みが良いと思います。厚すぎると圧迫する力が

傷に届きにくいですし、薄すぎても血が吸収しきれないです。ガーゼが家にない場合

は未使用のタオルなどを使ってもよいと思います。

圧迫をする時間は、まずは5分程度にしてみましょう。日常的に起こりうる傷

はほとんどは静脈からの出血です。静脈からの出血であれば、通常圧迫で止まります。

5分経ってからガーゼを取って、傷を見てみましょう。止血されていればOK。次の

ステップにうつります。止血されていなくても、さっきよりも出血が少なくなった

なら、もう5分圧迫です。圧迫による止血効果を侮るなかれ。圧迫止血は

手術中でも使われている技術の一つです。

 

全然出血の勢いが弱くならずにすぐに傷が真っ赤になってしまう場合、これは

この時点で病院に連絡しましょう。細い動脈からの出血の可能性があります。

細い動脈からの出血と思っても慌てずに、圧迫を続けてください。

細い動脈からの出血でも圧迫によって、押さえている間は止血できていたり、

出血の勢いはだいぶ少なくなるはずです。

 

 番外編 おすすめしない止血の方法

それは間接止血法。これは正直、プロの止血方法です。

間接止血法とは傷より手前にある動脈を圧迫して血の流れを止めるまたは弱くして、

出血を少なくする方法です。

指先の傷なら指の根本を押さえる、手・腕の傷なら二の腕の動脈を押さえる等。

傷を圧迫するのが怖いし痛いという気持ちはわかりますが、逆効果になっている

ことがほとんどです。

間接法で動脈の血の流れを止める場合、かなり強い圧迫が必要です。

ほとんどは動脈の流れは止まらず、体に戻っていく静脈の流れだけを止めて、

うっ血(体に血が戻らずに静脈の内部に血が滞ってしまうこと)し、

出血しやすい状況ができてしまいます。

 

また、仮に完全に動脈の血の流れを止めることに成功しても、そのままにして

おくと、血が通わなくなった組織が壊死をしてしまうので、数十分に1回は血流を

再開させなければなりません。

専門的過ぎの止血方法です。一般の方には向きません。

 

2. 傷をよく洗う

次に、傷をよく洗います。水道の流水できれいに洗ってください。

可能であれば、シャワーの水で洗うと水流に勢いがあるのでよりきれいになります。

流水で洗っていると、傷に染みて痛いのですが、ここは辛抱です。

泥や砂利、血の塊があれば、それらが除去できれば理想的です。

もし病院に行くことになった場合は、病院でも処置前に傷を洗うことに

なるのですが、その場合は生理食塩水という体の組成に近い水を使うことが

多く、生理食塩水ならしみることはないです。

 

3. こんな傷は病院に相談を。

① 傷の底につぶつぶの黄色い組織がみえる

② 傷が自然に1~2mm以上 開いている

 

軽く傷を広げてみて、傷の底に黄色い組織が見えたら、病院に相談した方が良いと

思います。黄色い組織は皮下脂肪です。

下の絵のように、皮膚の構造は表面から表皮、真皮、皮下脂肪という層構造に

なっています。ちなみに、真皮は白い組織です。傷の底が白い場合は真皮までの

傷ということになります。

一般社団法人 日本創傷外科学会 ホームページ内「切り傷」より抜粋

ただ、ここで注意点は、皮下脂肪は場所によって量が違うということ。

指や手は比較的皮下脂肪が少ないので、痩せている人など、そもそも脂肪が

ほとんどないということもあります。脂肪がなくても、深い傷は②に該当する

ことが多いので、判断がつかなくても②で病院に行った方が良いということに

なります。

あとは、傷の底が深くて見えない場合も、病院でみてもらった方がよいかも

しれません。

 

では、なぜ病院に行った方がよいのか。それは、

  • 縫った方が良い傷である可能性が高い
  • 縫わなかったとしても、抗生剤を飲んでおいた方が無難

という理由です。

 

傷が自然に開いてしまっている傷は、縫合または医療用のテープで傷を閉じた方が

良いと思います。

縫合をしなくても、傷の形によっては抗生剤を飲んでおいた方がよいことが

多いです。

 

ちなみに、縫うのであれば、受傷から6~8時間以内に処置をした方が良いと

一般的には言われていますが、どこまで根拠のある数字なのかは詳しく

知らないので、今回は言及しません。

 

 番外編 縫った方がいい傷を、放置した場合はどうなるの?

①化膿する可能性が高くなる

②傷跡が太く目立つように治る可能性がある

 

病院で縫ったり、処置をするのは怖いから、このまま家で傷の様子を見よう。

そう思われる方もいるかもしれません。

前述のとおり、深さのある傷は化膿することがありますので、

抗生剤の内服薬が必要になることがあります。

最悪の場合、蜂窩織炎というより重症な皮膚の感染症に発展することもあります。

 

傷は縫わなくても治ります。ただ、この場合は傷の隙間に肉が再生して傷を

埋めて治るという経過になります。この部分は創痕として残ることが多いので、

傷が開いている部分の全部が創痕として残ると思ってください。また、治る

までも時間がかかります。縫合をした場合は、傷はくっついて治るという経過

ですので、創痕は線状となります。

 

4.どの病院に相談すればいいの?

怪我の処置や縫合は外科全般(消化器外科、脳神経外科など)、形成外科、皮膚科、

整形外科など対応できます。ただ、開業医では外傷の対応ができるかどうか事前に

電話で確認しておいた方が無難です。

中でも、形成外科は傷をきれいに治すことに関しての専門性があります。

ただ、内科や外科程は多くはないのが現状です。総合病院でも、どこにでも

いるというわけではありません。

いざと言うときのために、近くの形成外科がどこにいるのか知っておいても

いいかもしれませんね。

 

下のリンクで、形成外科専門医の医師が、どの病院にいるかがわかります。

日本形成外科学会|専門医一覧

 

診療時間外であれば、救急外来に相談ということになりますので、

近くの総合病院に電話してみるか、市区町村の救急医療の案内番号に

連絡してみることになります。

「救急医療」「案内」「(地名)」といったワードで検索してみてください。

 

 番外編 犬や猫に噛まれた傷は?

犬や猫など動物に噛まれてできた傷は、転んでできた傷や刃物で切った傷に

比べると、傷が化膿するリスクが高くなります。

動物の口の中の雑菌が傷に入り込んでしまうからです。

 

なので、初期対応としてはよく洗うことです。洗う方法は、前述した方法と

同じです。

化膿する可能性がある傷ですから、抗生剤を内服する必要があるかもしれません。

よほど浅い傷 (表面の皮が少しむけた程度) 以外は病院に相談した方が

無難だと思います。

 

怪我をしないことが一番ですが、万が一の時に

この知識が何かのお役に立てると嬉しく思います。

では。