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【家庭の医学】大腸癌の治療費ってどれくらい?民間医療保険の正しい考え方②/2

この記事は前回の記事の続きとなります。大腸癌の治療費、民間保険の考え方についての私見について書いています。

 

前回の記事で大腸癌の手術は確かに高額だが高額療養費という制度があるので、一定額の支払い以上は負担はないということ。ただ、大腸癌の治療は手術では終わらないことが比較的多いことについて書きました。続いて、大腸癌の治療で手術以外にはどのようなものがあるのか、それをふまえてどのように保険を考えればいいかの私見を述べていきます。

大腸癌の治療の全体ではどのような治療費がかかるのか?

進行大腸癌に関しては手術のみで治療が終了しないことが結構多い印象です。手術で治療が完了するのはステージ1とステージ2の一部分のみです。手術以外に治療が想定されるケースは

  • ステージ2の大部分とステージ3の大腸癌:手術+術後補助化学療法(3~6ヶ月)
  • ステージ3の直腸癌の超進行例:術前化学放射線療法(約1か月)+手術+術後補助化学療法(6ヶ月)
  • ステージ4の大腸癌:むしろ抗癌剤治療が治療のメインで、その他に手術、放射線治療などの可能性

術後補助化学療法:

手術の後に行う再発率を下げるための抗癌剤。最大で費用がかかる場合は、2種類の抗癌剤を半年間おこなうケースです。おおよそ1か月の自己負担は約8万円と書いてあるサイトもありますが、ジェネリック医薬品が今の主流なので、おそらくはもっと安くなっているはずです。

直腸癌に対しての術前化学放射線療法:

すごく進行した直腸癌に対して行われることがあります。術前におこなう1種類の抗癌剤内服薬+放射線治療放射線治療は短期間で終わらせるものと1か月くらい行うものの2種類の治療の方法がありますが、私の今までの経験的には1か月くらい通院でおこなうことが多いです。1か月コースの場合、自己負担は放射線治療が約15万円(3割負担の場合)、抗癌剤内服(ジェネリックの場合)は薬代だけで約6000円(3割負担の場合)。

 

近年、ステージ3直腸癌治療は術前放射線治療+術前化学療法+手術+術後補助化学療法といった手術以外の治療をたくさん組み合わせて治療成績を上げていくという考え方が欧米を中心に広がってきています。今後、さらに直腸癌の治療期間が長くなり費用が増える可能性があるわけですね。

 

自分の感覚的には①手術+術後補助化学療法のケース、②手術のみのケースの順番に多いような印象です。ただ、これはがん検診の受診率の違いによって地域差が大きいところですので、あくまで参考程度に。

 

大腸癌で一番治療費用がかかるのは?

大腸癌で一番治療費がかかるのはステージ4大腸癌です。理由は

  • 治療方法は個別に違い、治療期間の予測もたたない
  • 治療のメインとなる抗癌剤が、高額かつ長期間になる

上で書いたようなステージ1から3までの治療は具体的な治療の期間はほぼ決まっています。しかし、これと違って、ステージ4の大腸癌の治療は期間の具体的な目途が立ちません。なぜかというと、治療の仕方がケースバイケースかつ複雑であり、決まりきった治療の流れがないからです。治療の目的は「治す」ことではなく「余命を長くする」ことです。もちろん昔と違って治るステージ4大腸癌があるのは確かですが、確率論からいうと、不治の病ということになってしまう可能性の方が高いんですね。

「治す」のを目指すことが可能な場合は、治療はどこかのタイミングで区切りがつくことがあります。しかし、「余命を長くする」治療の場合は、抗癌剤が効かなくなるまでずっとおこないます。もちろん、これは患者さんの希望にもよります。平均余命が約2年半ということを考えると、約2年間くらい抗癌剤をおこなうことになるわけです。また、日々の医療の進歩により、余命期間は確実に長くなってきています。つまり、いつまで治療が続くのかは予測不可能です。

ステージ4大腸癌のメインの治療である抗癌剤は術後補助化学療法のときはステージ4では3種類または4種類の薬を組み合わせて使います。当然その分、薬代が高くなります。どのような薬を使うかにもよりますが、薬代だけでおおよそ1か月に10~30万円(3割負担の場合)かかります。ただ、これもジェネリックを使うことが多くなったので、さらに安くなっている可能性もあります。

 

癌保険における考え方

難しい話になってしまいましたが、おさえておきたいところは

  • 手術は治療費が高額だが、治療期間が短く、高額療養費制度があるので安心。
  • 抗癌剤治療治療期間が長いため、トータルの負担額は高くなる可能性がある。
  • 抗癌剤治療の場合は多くは高額療養費の限度額に達することが多い。
  • ステージ4大腸癌の治療が一番高額になる。

大雑把に考えるのであれば、大腸癌治療の最大費用の推定

自分のその時の高額療養費の1か月の自己負担上限額×約24ヶ月以上

という風になります。

大腸癌は高齢でみつかることが多いですから、70歳以上の高額療養費制度も把握しておくべきですね。

厚生労働省 高額療養費制度を利用される皆さまへ より抜粋

ちなみに、抗癌剤は大腸癌の場合は外来通院で主におこないます。前の記事の69歳以下のものも参考に。

注意点

  • 高齢化社会に伴って高齢者の自己負担額を増やしていく流れがありますので、将来的には高額療養費制度の自己負担額も増えている可能性があります。
  • 医療の進歩によって平均余命は延長していますので、将来的には平均余命はさらに増えて治療期間も長くなることが予想されます。

 

これで大まかには大腸癌の治療最大費用の見込みができるわけです。あとはこの費用を保険で賄うのか、自分の自己資金で賄うのかということです。こればかりはその人の収入や自己資金、何歳まで働くのかということによるので個人の判断です。あと、あくまで最大費用の見込みなので、どこまで備えるかどうか否かも個人の判断です。そもそも癌になるかどうかすらわからないわけですから。

心筋梗塞脳梗塞で病院に運ばれ、集中治療で約1か月入院したけれども、残念ながらお亡くなりになった。となった場合、高額療養費1か月分の治療費となるため、貯蓄でカーバーできると思います。

 

自分はというと・・・

結婚したての若い時に積み立てタイプの「三大疾病」の保険に入ってしまったので、ちょっと後悔しています。今解約しても積み立てタイプなのに損失額が出てしまって、もったいない気がするので、解約していません。

保険の人も保険商品のことだけ説明して、どれくらい癌の費用がかかるかとか言ってくれなかったですからね。まぁ、どんな治療があるかは専門的過ぎるので説明はできないにしても、せめて高額療養費制度があるということは言うべきなんじゃないかなと個人的には思いました。若いうちは、社会のことで知らないことも多いわけですから。

 

 

では。

 

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