この記事は、家でできる傷の手当てについてを紹介する内容になっています。
【免責事項】個人の医学知識や診療経験に基づいた内容ですので、確実な治療効果を保証するものではありません。治癒過程において、違和感や増悪を認める場合は医療機関の受診をおすすめします。
傷をきれいに早く治すハイドロコロイド製剤 (よく知られているのはキズパワーパッド)の使い方や、その代用品についてを書いていきます。子供って何かと怪我すること多いですよね。
昔の常識
昔の傷の常識は毎日消毒したり、早くかさぶたにするために傷を乾燥させたり、っていうのが常識でした。病院でも術後の傷を毎日消毒するって習慣があったくらいです。でも、私が医者になった頃のだいたい10年前くらいには、そのような消毒文化はなくなっていましたね。
毎日の消毒がなんで良くないのか。それは効果がないからです。消毒には滅菌(めっきん)と減菌(げんきん)の2種類があります。滅菌とは細菌などを全くのゼロにする行為、減菌は害がない程度まで細菌を減らす行為です。例えば、手術器具の消毒は滅菌になるわけですが、滅菌をおこなうためにはオートクレイブ(長時間の煮沸消毒みたいなもの)やガンマ線処理など、おおよそ人体には使えない強力なもの。
そのため、傷の消毒などに使うイソジン消毒は、そこまで強くはない減菌という扱いになります。つまり、傷を消毒しても菌は少し残ります。少し残っても菌が減ってくれれば効果があるんじゃないのか?これはあくまで一時的な効果です。手術のような清潔な場所ですら、イソジン消毒した皮膚は3時間後くらいに元通りになっていると言われています。なので、日常環境においては消毒しても、すぐに元通りってわけですね。さらには、消毒をすると周囲の皮膚が荒れてしまいます。悪いことはあっても、良いことはないってことで、消毒の文化はなくなりました。
次にかさぶたにして治す方法。これは結果的に治るまでが遅くなると言われています。ただ、個人的には悪い方法ではないと思うんですがね。だって、かさぶたって人間の本来の治癒能力ですから。
ハイドロコロイド製剤の使い方
これはパッケージの箱にも書いてあると思うので、要点だけ。
- 綺麗に傷を洗って、止血を確認してから貼る。
- テープに染み込んでいる量が増えて、はがれてきてしまったら交換。長くても5日間くらいでは張り替える。
ただ、ハイドロコロイド製剤には不向きな傷はあって、傷からの染み出しが多い傷には、すぐに交換することになってしまったり。あとは、広範囲な擦り傷とかも不向きですね。だって、大きなハイドロコロイド製剤って売ってないし、そもそも高いですよね。
ハイドロコロイド製剤の代用の仕方
では、このハイドロコロイド製剤ですが、どういう仕組みなのかというと、傷の周りを適度な湿潤環境を保ってやることで、傷の再生を促すというものです。適度というところが肝心ですね。余分な体液はテープが吸ってくれます。
でも、これに近いことは、ハイドロコロイド製剤を使わなくてできるんですね。例えば子供が転んで膝に大きな擦り傷ができてしまい、ハイドロコロイド製剤で傷が覆いきれない。そんな時は代用として、抗生剤入り軟膏+ガーゼ貼付が使えます。軟膏が患部に湿潤環境を作り、ガーゼが余分な体液を吸ってくれるというわけです。抗生剤入り軟膏は市販もされています。クロマイ軟膏とかですかね。
軟膏は白色のクリームタイプではなくて、ワセリンのような半透明でベタベタしたものが良いです。手に入りにくいようでしたら、ただのワセリンでもよいと思います。抗生剤入りといっても、傷を消毒するという意味合いではなく、あくまで軟膏の防腐剤的な意味合いですから。
あと、市販のものには抗生剤+ステロイドも入っているものもあるので、ステロイドが入っていないやつがいいですね。ステロイドは傷の再生を邪魔してしまいます。
そして、この抗生剤入り軟膏をガーゼの上に厚く塗ります。食パンにたっぷりマーガリンを塗るイメージです。ちょっとではなく、ベタつくくらいまで塗りましょう。そして、これを良く洗って止血した患部に貼り、テープで止めます。良く動かす場所でテープだと取れそうなら、包帯でもOK。
1日1回はガーゼ交換をしましょう。理想的にはお風呂の前に取って、傷を洗ってからお風呂上りに新しいものに張り替える。
利点は二つ
- 湿潤環境にすると治りが早い。
- ガーゼをはがすときにくっつかないので痛くない。
昔ながらの方法といえば、そうなのかもしれませんが、普段私も日々の診療で使う方法です。
では。